ヒミツの同居、はじめました。
「文ちゃん。なんで恭弥は水族館が好きなのか、教えてあげようか。」


おじさんはスプーンを置いて、穏やかな表情を向けた。


「ぜひ!」



「恭弥の母親は昔から仕事で色々な国に行っていて、月に3、4回しか帰ってこなくてな。

帰国するたびに2人で空港まで迎えに行って、帰りの途中にある水族館に寄って家族3人で遊んだんだ。

だから恭弥にとって水族館は、母親と過ごせる唯一の楽しい思い出なんだよ。」



どこか遠くを見つめながらおじさんは微笑んだ。


「そうだったんですか。」


小さい頃の恭弥くんはきっと今より素直で可愛かったんだろうな

今は……だいぶ意地悪だけど。

でも本当は寂しくて、強がってるのかな



「恭弥を一人ぼっちにしてしまう事もあった。だから、文ちゃんが毎日料理を作ってくれる事、あいつはたぶんすごく嬉しいんだ。」


そうだったらいいな



「だから、これからも恭弥をよろしく頼むよ。」


「はい」



彼女でもないのに、恭弥くんのためにできることはしたいと強く思った。

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