鈴姫伝説


身体に力が入っていないように見える。


気のせい……?



違うよね。



あたしも魔物と戦ってるゆきなのもとへと駆け寄り、戦いに参加する。




「くっ……!」



ゆきなが大きく飛び退いて、魔物から距離を取る。



はぁ、はぁ、と大きく肩で息をしているのが目に見えた。



「気をつけて!!」



「え?」



後ろの方まで飛び退いたゆきなを振り返ると彼女は眉をひそめた。















「今日の魔物……いつもと違う……!」






っ!





気を引き締めなきゃ……。




ゆきなの言葉にギュッ!と手のひらを強く握りしめる。





まず、魔物を倒さないと……千と話ができない。


魔物が先……!


自分に言い聞かせると、魔物へと駆け出す。



「やぁっ!!」



高く跳躍して魔物に蹴りかかるけど……。




「ちっ……!」



その時点ではその場に魔物はいなくなっている。




──パキィィンッ!




横からゆきなの氷の刃が魔物へと突き刺さる。



肉体的攻撃は効かないのかな……。


あたしにできるのは、肉体的攻撃だけ……。



どうすれば……!



「すずか!!霊力を使うミュ!!」



「霊力!?どうやって……」



「手のひらに意識を集中して。念じるんだミュ!!」



念じる……?



とにかくやってみるしか……!



あたしはゆきなと同じようにマネをして右手を魔物へ向けて、前へとつき出す。



(攻撃して!!)



やり方なんて分からない。



ただ、必死に祈ることしかできない。




すると、右手の手のひらの中でなにかが生まれて……。


光が溢れた。


みるみるうちにその光は大きくなり、球となる。



(いけっ!!)



念じると光の球は手のひらを離れて……。



「グアァアア!!」




見事に魔物に命中した。



やったぁ!



できたよ!




「お姉ちゃん!!今!!」



パキパキと音がして、ゆきなの氷が魔物を包んだ。



あたしは封印の鈴を握り締め、祈る。




あっという間に光の雨は降り注ぎ、魔物は浄化された。



「よっと」



降ってきた鈴を掴むとミューマへと渡す。


ミューマは鈴をラムネ色のビンにしまった。


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