鈴姫伝説
「く、……うあ……ッ!」
渾身の力を振り絞り、木を持ち上げる。
変身しているとはいえ、直径30cmはあるだろう大木は、あたしの力ではどうにもできない。
それでも……ゆきなを、助けないと……!
「ゆ、きな……っ!居たら……返事して……っ!」
どうにかして木を一つ横へとずらすことに成功したあたしは木の山の中を覗きこんだ。
ゆきな……いるよね……。
「っ!ゆきな!!」
木を時間をかけてどかしたあたしはゆきなを見つけた。
彼女の顔はどこかが切れてしまったのだろう。
頬が紅く染まっている。
しかし彼女は規則正しい呼吸を繰り返している。
良かった……無事だ……。
安心したのか身体の力がふにゃりと抜けてしまう。
だから気が付かなかった。
あたしの後ろに近づいていた影に……。
「……! イヤッ!」