鈴姫伝説
だけどそれは一瞬で……。
唇にあった違和感はすぐになくなった。
目を見開くとそこにあるのは千の顔。
金の瞳があたしを見つめた。
……今……もしかして!!
き、きす……した……?
心臓が飛び出てしまいそうになる。
ぼっ!と顔が熱くなるのが分かった。
千に捕らえられているにも関わらず、あたしは力が抜けそうになった。
そしてもう一度、彼の顔を見上げた。
え?
思わず、恥じらいも焦りもすべてが吹き飛んだ。
彼の右目に宿ったエメラルドグリーンの光が淡い光になり、消えそうになっている。
そして……。
「すず……ひめ……?」
「っ……!!」
瞳に光が戻っていた。
まるで魔法が解けたように。
今の彼はあたしの知っている千に戻っている気がした。
なんで……戻ったの?
こんな急に……。