鈴姫伝説
笑顔で振り向くと、そこにはミューマはいなかった。
「っっ……!!」
「グォオオワワアアアァァア!!!!!!」
大気を震わす低い怒号。
ビリビリと、震動が伝わってくる。
そこにいたのは、どんな木々よりも大きい、どす黒くて異様な臭いを放つもの。
ぼたぼたと、同じように黒い液体を垂らしている。
な、に……?
身体が動かない。
その得体の知れない生物は、紅い眼を持っていて、その恐ろしい眼であたしを見た。
「ひっ……」
逃げなきゃと思うのに、怖さで身体が固まってしまう。
その生物は、あたしを見つめると、その大きな手を振り上げた。
あ……。
やばい……。
ごっ…と、風を切る音が聞こえる。
──バチィッ……!!
両腕で顔を庇って、目をギュッと閉じたとき、何かが弾かれた。