鈴姫伝説
あたしにこんな力があったなんて……。
何だか身体が、軽い……!
「はああぁあっっ!!」
叫びながらあたしは、魔物へ向かって飛び出した。
右足を大きく振りかぶって、そのまま体重をのせて足を下ろす。
──ドゴッ!!
その攻撃は魔物の頭に当たったものの、鈍い衝撃が足に走って、地面に降りるとき、よろめいてしまった。
っっ……!
あいつの身体、すごく重たい。
魔物は少しよろめくくらいで、びくともしない。
どうしたら……。
ハッと、頭の中にあることが浮かんだ。
ように、動かなくしちゃえばいいんだよね。
なら……!
「魔物!!こっちよ!」
あたしは魔物に向かって叫ぶと、踵(きびす)を返して、鬱蒼とした森の中へ飛び込んだ。
「グルルッ……」
後ろのほうで、唸り声が聞こえる。
道なき道をあたしは、ひたすらめちゃくちゃに走る。
ピシッピシッ……っと、小枝が顔にぶつかった。
聞こえるのは、あたしの息づかいと、魔物の恐ろしい足音だけ。
魔物は怒り狂いながら、ジグザグに走るあたしを追いかけてくる。
途中で何度も木が倒れる音が聞こえた。
その走り方は、酷いものであることは、言うまでもない。
そろそろ、かな……?
──ズダァン……!!
あたしの予想は的中。
この森のどこかで、魔物は倒れ込んだ。
ブワァッと、砂ぼこりの混じった風が押し寄せてきた。
あわてて道を引き返す。
「やっぱり……」
魔物は、木の根に脚を絡ませてしまい、そこで蠢いている。
荒い息を整えて、あたしは魔物へ少し近づいた。
「グォオオワ……!!」
あたしを警戒しているのか、魔物は威嚇をやめない。