鈴姫伝説

あたしにこんな力があったなんて……。

何だか身体が、軽い……!



「はああぁあっっ!!」



叫びながらあたしは、魔物へ向かって飛び出した。

右足を大きく振りかぶって、そのまま体重をのせて足を下ろす。

──ドゴッ!!

その攻撃は魔物の頭に当たったものの、鈍い衝撃が足に走って、地面に降りるとき、よろめいてしまった。

っっ……!

あいつの身体、すごく重たい。

魔物は少しよろめくくらいで、びくともしない。

どうしたら……。

ハッと、頭の中にあることが浮かんだ。

ように、動かなくしちゃえばいいんだよね。

なら……!



「魔物!!こっちよ!」



あたしは魔物に向かって叫ぶと、踵(きびす)を返して、鬱蒼とした森の中へ飛び込んだ。



「グルルッ……」



後ろのほうで、唸り声が聞こえる。

道なき道をあたしは、ひたすらめちゃくちゃに走る。

ピシッピシッ……っと、小枝が顔にぶつかった。

聞こえるのは、あたしの息づかいと、魔物の恐ろしい足音だけ。

魔物は怒り狂いながら、ジグザグに走るあたしを追いかけてくる。

途中で何度も木が倒れる音が聞こえた。

その走り方は、酷いものであることは、言うまでもない。

そろそろ、かな……?

──ズダァン……!!

あたしの予想は的中。

この森のどこかで、魔物は倒れ込んだ。

ブワァッと、砂ぼこりの混じった風が押し寄せてきた。

あわてて道を引き返す。



「やっぱり……」



魔物は、木の根に脚を絡ませてしまい、そこで蠢いている。

荒い息を整えて、あたしは魔物へ少し近づいた。



「グォオオワ……!!」



あたしを警戒しているのか、魔物は威嚇をやめない。



< 17 / 511 >

この作品をシェア

pagetop