鈴姫伝説



その人は足元に転がった今あたしが封印したばかりの鈴に手を伸ばしている。




鈴、拾ってくれてるんだ!!



あたしは疑いもせず、叫んだ。





「あの、それ、あたしのです。



ありがとうございます。 くださ~い!!」





鈴を持った人は黒い足首まで隠れるロングマントを着込んでいる。



マントについたフードを被っており、顔が影になっていて、口しか、見えない。




誰なんだろ……?




見たことないや。




あたしはマントの人へと近づいた。


すると、あたしを見た瞬間その人は鈴を掲げてニヤッと笑った。




なんとも不気味な笑顔。



ゾクリと背筋が凍りつく。




「これはいただくぞ」




声からして、女性のようだ。




フードから少しこぼれた髪は真夜中の空のよう。




長いそれはパタパタとマントを打ち付ける。




その髪をたなびかせ、この世界から華麗に去っていった。








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