鈴姫伝説
「今日は早くに帰ろう。
鈴もたくさん集めたし……。
一気に移動もできるようになったしな」
ナディはいつもより柔らかく微笑むと右手を掲げた。
「うん……」
ミューマは早くに休ませなきゃ。
まだ、具合は悪そうだ。
頷きながら、腕の中で眠るミューマを見つめた。
いくぞ?とナディが言ったので、ミューマを抱き締める力を少し強めた。
そしてゆっくり目を瞑る。
いままで聞こえていた葉のざわめく音が小さくなり、頬に感じる風がむんわりとした、熱風へと変わる。
そういえば……さっきの女の人、誰だろ?
なんで影の世界にいたのかな?
霊力を持ってる人だよね……じゃないと影の世界にこれないし……。
ほかに鈴を集めている戦士がいるってナディは言ってたけど、知らなそうだったし。
誰なのかな……。
わずかな間に頭を巡る、さまざまな疑問。
あ……やば。
ひとつ、大事なことを思い出した。
あたし、あの人に鈴をひとつ取られたんだった……!!
このあと起こるであろうことが頭をよぎって、さぁ……と血の気が引いた。