鈴姫伝説
そのとき。
──ガサッ……。
近くの草が大きく揺れた。
あたしたちの長い沈黙を破ったのは黒くて大きい、“魔物”だった。
あたしたちを見るや否や、その長い手をしならせあたしたちを潰そうとする。
条件反射で魔物から離れるべく、後ろへ飛んだ。
「たぶん魔物を倒せば
“マントの人”は現れる」
「今は魔物を倒すことに専念して!
お姉ちゃん!!」
ナディは浮かび上がって避ける。
ゆきなも後ろへ飛びながら叫ぶと次の攻撃に移って、その手に霊力を込めた。
今は魔物を倒さなきゃ……。
他はあと!!
焦っちゃダメ……落ち着いて……。
ゆきなの氷が届かなかったため、魔物は草の中へと紛れ込んでいく。
あたしは目を瞑った。
息を大きく吐き出す。
──いた……。
「そこだああぁああっっ!!」
気合いと共にあたしは木の間に向かって後ろ回し蹴りをかます。
「グオアッ!!」
うめき声をあげ、魔物は森から転がりでた。
あたしから隠れようったってムダだよっ!
もう一発!!
あたしは魔物を上に……
蹴り上げた。
「すご……」
ゆきなの呆気に取られた声が後ろから聞こえた。