鈴姫伝説
そこにはほぼ、物が置いていなかった。
置いてあるものといえば、畳の上に一組の布団と小さなちゃぶ台だけ。
その敷かれた布団には、キレイな顔の20代の男性が寝ていた。
ま、また美形……。
「兄様、客人」
エクが言うと男性はゆっくりと起き上がった。
それをエクは支える。
この人かエクの兄様……?
あまり、似ていない……。
その男性はあたしを見ると微笑んだ。
「ようこそ」
その声はどこかで聞いたことのある声音。
緊張していた心が落ち着いていく。
「そこに、座って」
言われるままに、あたしたちは布団の近くに敷かれた紺色の座布団に座った。
ナディだけは座らず、警戒しながら、部屋の上の方へと浮かび上がっている。
「よく来たね」
再びニコッと笑う。
その笑いかたはとてもキレイで上品な雰囲気に呑まれそうになってしまう。
凄いよ、この上品なかんじは生まれつきとかじゃないと、出せないよ……。
彼の笑いかたはキレイだけど、エクのそれとはまた違う。
あたしはジィッとその兄様を見つめた。