鈴姫伝説
寂しくて、寂しくて、いつも兄様からもらったキレイな音のする鈴を構っていた。
それだけが、孤独を紛らわしてくれるようで。
そんなとき、千と出会ったんだ。
千はとてもヤンチャで元気で好奇心旺盛の勇気のある、男の子だった。
だから、この日も千は興味本位であたしの邸に潜り込んでいたんだ。
そこをあたしは見つけてしまった。
『あなた、だぁれ?』
『千……』
千は父が治めている集落の子供だった。
あたしと千はいつのまにか、とても仲良くなっていたんだ。
独りだったあたしには嬉しくてたまらなかった。
毎日毎日飽きずに、たくさん遊んだ。
遊びまくった。
カルタや花札、ときに千の話を聞いたりもした。
『あたしも、外へ行きたい』
外に出たことのないあたしにとっては、千の話は全て夢でしかなくて……憧れていた。
『……出来ない。 君は“姫”だ。
鈴……』
いくら頼んでも、願っても千は頑として、連れていってはくれなかった。
それでも、彼はいつでも来てくれて、あたしは嬉しかった。