鈴姫伝説
……いや、違う。
暗くなったのはあたしの周りだけ。
おそるおそる顔をあげれば、そこには金の瞳があたしを覗き込んでいた。
男の人があたしのすぐ近くに立っていて、あたしに影を落とす。
「うひゃあっ……!!」
変なうわずった声が静かな辺りに響いた。
「すずか!!そいつは敵だミュ!!」
へ……?敵……?
この人が?
ミューマは知っているんだ。
だからさっきミューマが「離れろ」と言ったとき、彼は「気付いていたか」と言ったんだ。
恐い人なの?
身体を両腕でぎゅっと抱きしめた。
わずかに自分の身体が震えているのに気付いたから。
「…………」
しかしなにも起きない。
さっとあたしの周りにあった影はなくなって……。
「まてっ……」
ミューマの声だけが聞こえた。
気付けばこの森の中には、あたしたちしかいなかった。
わずかな間に彼はこの森の中から姿を消していた。