鈴姫伝説
そんなゴタゴタが片付いて、気づけば空は茜色に染まっていた。
すごくキレイな空。
あたしと千は、邸の広い庭の池の淵に立ち、光をその金色の鱗に受けて、キラキラと輝く鯉を見つめていた。
その夕日はあたしたちをも照らし出す。
『あ、あのね、千』
『……ん?』
『助けてくれて……ありがとう』
素直に礼を言葉にすると、恥ずかしくなってしまって、持っていた扇子で顔を隠した。
あたしを護ってくれて嬉しかった。
とても、カッコよかった。
言葉では言い尽くせないくらい。
ありがとう、ありがとう……。
さっきまで、怖くて仕方なかったのに……。
なんでだろうね。
千がいてくれるだけで、この胸がなんと言うか……高鳴って、嬉しくなる。
『ありがとう……』
しかし、いつまで経っても返事がない。
……なんで?
無視はちょっと……。