鈴姫伝説
『鈴……どうしたんだ? それ……』
千はあり得ないと言う風にあたしを見る。
あたしにも分かんないよ!!
そう言おうとした時。
身体が急に横へ動いた。
──ズシャ……。
あたしの数センチ横の地面に奥深く、魔物の手がめり込んでいる。
あと、一歩遅ければ……。
そう思うだけでゾッとする。
『鈴に手を出すなっ!!』
千が叫ぶなり、彼の身体は瞳と同じ色の金の光に包まれる。
光を帯状に靡かせて、千は一直線に魔物に突っ込んだ。
──ズウゥン……。
大きな音を立てて倒れ混む魔物。
すごい……。
思わず息を呑んでいた。
千、こんなに強いなんて……。
あたしも、なにかしなきゃ……!
そう思うのに足がすくんでしまい、身体が思うように動かない。
『ああっ!!』
起き上がった魔物はその長い爪で千を掴んだ。
『やめて……!』
魔物はもう一方の手を、その手の中で気を失っている千へと向ける。
ダメ……。
傷つけないで……!
『やめてえええぇえっっ!!!!』
──バリンッ!! パキパキ……。
何かが割れた。