鈴姫伝説
──ピチャッ……。
頬に冷たいものが当たる。
気持ちいい……。
ぼんやりとした視界は、ほとんど焦点があわず、何がなんだかわからない。
ここはどこ……?
あたしは……なにを……。
目に飛び込んできたのは、懐かしい金の瞳。
『千……』
『起きた?鈴。
傷はもう、治ったよ』
にこりと微笑む、その彼の顔を見ると、温かいものが頬を伝った。
涙……?
泣いてるの?
あたし。
なんで涙なんか。
そのとき、千の長い指があたしの涙を拭った。
その一つ一つのしぐさに、胸が締め付けられる。