鈴姫伝説
『千……』
彼の名前を呼ぶ。
途端に視界が塞がれた。
気づけば、あたしは千の力強い腕のなかにいて……。
鼓動がドク、ドク、ドク、と速くなった。
『鈴……』
切ない声。
再び涙が流れた。
『鈴……好きなんだ』
『えっ』
『ぜんぜん身分が違うし、姫であるお前に、こんなこと言っちゃいけないって知ってる。
でも……でもっ……!!』
そこまで言って、あたしをきつく抱き締めた。
『好きなんだよ』
耳元で囁かれ、耳が熱を帯始める。
胸がきゅうう、と締め付けられ、苦しくなった。