鈴姫伝説
「え、エクを?」
「あぁ、あのこを連れていってくれ。
あの子も、霊力が使える」
「エクも……」
霊力が使えるんだ……。
そういえば、あの結界ってなんなんだろう。
ここに来るときに通った、ナディが言っていたもの。
「あの、結界って?」
「あ、聞いたのかい?
僕がここに住むために特別に張ったんだ。
霊力の強いものと、僕とエクしかこれないし、見ることもできない。
すずかは、別だけどね」
唐突とした、質問だったけれど、銀さんは優しく笑って答えてくれた。
いい人だよ……。
あたしの兄なんて、信じられない。
「エク」
「はい」
銀さんが何もない空間に向かってエクを呼ぶと、彼女はすぐに部屋に入ってくる。
「なんでしょう、兄様」
「今日から、エクはすずかたちと共に行動し、助け合っていってくれ」
「え、でも」
それじゃ、エクが……。
エクは、イヤじゃないの?
「遠慮しないで。
僕にできることはそれくらいしかない。
僕は、すずかのおかげでもう大丈夫だし、エクもいきたそうじゃないか」
「え?」
そうかなぁ……。
あたしには、違いがわからないんだけど……。
エクの顔を見つめるけど、彼女は顔色ひとつ変えない。