鈴姫伝説




「なんのご用でしょうか」




『……うふふっ、怖い顔をしなくても大丈夫よ。


今日は、様子を見るだけだったから』



「そうですか」



「あの、女神様」



『何かしら?』



あたしは、勇気を振り絞って、女神様に話しかけた。



「あの、あたし前にあなたに記憶を取り戻すように呪文をかけてもらいましたよね。


あのとき、思い出したのは千と幼馴染みだった、ということだけでした。


それ以降は何も思い出せません。


そして、今回銀さんによって、ようやく新たに思い出したことがあります。


なんであたしは、あのときすべてを思い出せなかったのですか?」



『…………』



女神様に会ったときから、あたしは昔のことを思い出そうと頑張った。


けれど、頭にうかぶのは、千と遊んでいるときのあたしと、鈴になったときのことと、誰かと戦っているときだけ。


他には何も、思い出せなかった。


もっと、記憶はあるはずなのに。



「たしかかい?


その、女神様に呪文をかけて貰ったというのは」



「……はい」



「それなら、おかしい。


過去を思い出す呪文は、必ずすべてを思い出せるはずなんだが……」



銀さんは眉をひそめて、電鈴を睨んだ。


女神様……どういうこと?





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