鈴姫伝説
「もし変身が解けてしまったときは、制服になるようにしといたミュ」
……はぁ?
え、ちょっと待って……。
「どういうことぉっ!!」
「だから、すぐにすずかだと分かるように、しただけだミュ」
……確かにあたしの学校の制服は、セーラー服だけど……。
しかも、とっても目立つやつ。
スカートと襟のところはハッと目を引く濃い海のような青色なのだ。
紐リボンは、明るい朱色のような赤色でその目立つこと目立つこと。
この制服をきていれば、大抵目立ってしまう。
つまり、どんなときでも、変身前にどんな服を着てても、変身が解ければたちまちセーラーになってしまうのだ。
あたしは諦めて、ふぅ……、とため息をついた。
もぅ、いいよ……。
なんでも……。
きょとん……、としていたミューマは突然、ハッとした表情になった。
その瞬間、あたしも表情が硬くなった。
自分でも分かる。
魔物が出たんだ……!
ミューマと目が合って、同時に頷いた。
あたしの言いたいことがミューマには分かったようだった。
「今すぐ、『影の世界』へ!!すずか、変身ミュ!!!!」
『影の世界』……これも最近ミューマに教わったこと。
この前、魔物を倒したときにいった、あの森が影の世界なのだ。
影の世界は、霊力のある人じゃないと見ることが出来ない。
ちなみに魔物も霊力がある人じゃないと見ることが出来ないらしい。
影の世界は、この世界の影の部分、ということだ。
影の世界に、表の世界で溜まった悪意が集まってきて、魔物となるのだ。
だから、魔物は影の世界にしか、存在しない。
まぁ、どっちにしろ、力のない人は影の世界に行けないので意味はないのだが。
そして、この世界には影の世界に行くことの出来る『扉』がいくつもある。
そう。
この部屋から飛び出たそこが、ひとつの『扉』。
部屋の窓から飛び降りたときに、霊力を使えばあっという間に影の世界に行ける。