鈴姫伝説
「あっ」
気づけば、マント人はあたしの背後に回り込み、右手を大きく振りかぶっていた。
殴られるっ……!
瞬時にしゃがむと、頭から数センチのところを拳が空気を切り裂いた。
なに? この人。
速い……。
動きが、読めない!!
「すずか!! 大丈夫か!?」
──パキパキッ!!
何かが凍りつく音がして、あたしに吹き付ける風が止んだ。
ナディ……ゆきな……。
「ありがと」
誰にも聞こえないように呟く。
風のように走り出すと、ゆきなが作ってくれた煌めく氷の壁が、あたしたちを囲んでいた。
これなら、風にジャマされない……!
「はあっ!!」
気合いと共に、あたしは右手を繰り出す。