鈴姫伝説
「あなただって、この世界を守る人だったじゃない。
なのに……なんでこうなっちゃったのよ!」
悲しくて悲しくて、あたしは泣いていた。
前世の記憶を取り戻し始めて、あたしは千に対する思いが変わってきていた。
千が傷つけるようなことをすると、悲しくてたまらなくなる。
もう、やめて……。
「お前に何がわかる!!」
突然千は叫んだ。
声を荒げたことのない千が怒鳴ったことに、あたしはビクリと肩を震わせる。
でも、それ以降、彼は黙ってしまった。
その時フッと身体が軽くなった。
この感覚……。
「あたし、知ってる。
あなたが優しいことも、強いことも……。
そんなあなたがあたしは好きだったんだよ?……千」
「……鈴!?」
彼はハッとした顔になってこちらを見た。
今のあたしはあたしじゃない。
もう一人、この身体のなかに誰かいるみたい。
そう……。
『鈴姫』だ。
あたしは今、木村すずかじゃなくて、鈴姫なんだ……。
いろんな思いが込み上げてくる。