鈴姫伝説
『急にいなくなってゴメンね、千』
「鈴……」
一瞬、千があのころの彼に戻った気がした。
けれど……。
「話は終わりましたか?」
ガラナと呼ばれた彼女は、マントを脱ぎ捨てた。
「千。
こいつの話に流されてはいけません。
もういいですか?
消しちゃっても」
消す……って、あたし殺される!?
彼女の瞳には光なんて存在しない。
あるのは闇。
深く、暗い、光など差し込む隙間もなく、絶望だけを写してる。
その瞳をみた瞬間、心臓が潰されそうになるくらい、苦しくなった。
この瞳を見てると、すごく悲しくなるの。
でも、それは千といるときだけ、違う気がする。
チクンとまた、胸が痛んだ。
もう、これなんなの?
苦しいよ……。
ガラナは千に向かって質問したのに、彼は何も答えなかった。
「では、排除します」
彼女の手のなかの光はみるみる大きくなり、再びあたしへと放たれた。
速い!!
千とガラナの関係についてぼんやり考えていたあたしは、動くのが一歩、出遅れた。
──バチバチバチバチッ!!
スパーク音が辺りにこだまする。
「きゃあぁああっっ!!」
身体がグラリと傾いた。