鈴姫伝説

とんっ、と窓枠を蹴って宙へと飛び出す。

身体は重力に従って、真っ直ぐ落ちて行く。

あたしはすぐに目を閉じて、心の中で念じた。


(あたしたちを、影の世界へ……)





──ふわり。

肌に感じる空気がむんむんとした熱気から、ヒヤリと冷たいものに変わる。



足元に感覚がして、目を開けた。

そこは、この前きたときと同じ景色が広がっていた。

良かった……。

無事についたみたい。



隣には、ちゃんとミューマがいて、険しい表情をしている。


近い……。

気配がする。

油断しちゃダメだ。



あたしは神経を辺りに向けた。



「…………」



どうやら、あたしたちの目の前の真っ直ぐ進んだところにいるらしい。

もちろん、そこは不揃いで鬱蒼とした草が伸びっぱなしになっている。

ミューマの瞳を見つめると、真っ直ぐな瞳は頷いた。



あたしたちの間に妙な緊張感が漂う。

あたしを先頭に、警戒しながら草をかき分けて慎重に進む。
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