鈴姫伝説






「……ほら、歩ける?」




「…………」




「……ちゃんと掴まって」




彼をあたしの部屋のベットへと寝かせる。



身体が熱く、熱を持っているようだ。



とにかく、冷やしたほうがいいよね。



他の皆がいなくてよかったかも。



皆なら、千を見るなり攻撃しかねないから。




「ちょっと待ってて。



氷水持ってく、る!?」




歩き出したとき、身体がカクンと止まった。



右手首を見れば、大きな彼の手が、あたしの手首を掴んでいる。




「いくな……」




途端にそこから熱を帯びていく。



そんな、なんで……?



『いくな』って、どういうこと……?



確かにあたしは、あなたを助けたい。



もとのあなたに戻って欲しい。



千は熱で頭がボーッとしているのか、目がトロンとしている。



たぶん勘違いしてる。



あたしのことじゃない。



ズキン……と心が痛んだ。



< 299 / 511 >

この作品をシェア

pagetop