鈴姫伝説





あたしは千の腕をムリヤリ払い落とすと、上半身を起こした。



それに気付き、目が覚めたのか、彼も身体を起こす。




「出てって……」




「……は?」




「出てってって、言ってるのよ!!」




とぼけている彼の態度に腹がたった。



温かいものが、鼻の横を通っていく。



涙はあとからあとから溢れてきて、止まらない。



キィ……と窓が開く音が静かな部屋に響いた。



隣にあった体温がスッと無くなる。




「……すまない」




それは何に対してだったのだろう。



彼の気配は部屋から消えた。



< 306 / 511 >

この作品をシェア

pagetop