鈴姫伝説
あたしは千の腕をムリヤリ払い落とすと、上半身を起こした。
それに気付き、目が覚めたのか、彼も身体を起こす。
「出てって……」
「……は?」
「出てってって、言ってるのよ!!」
とぼけている彼の態度に腹がたった。
温かいものが、鼻の横を通っていく。
涙はあとからあとから溢れてきて、止まらない。
キィ……と窓が開く音が静かな部屋に響いた。
隣にあった体温がスッと無くなる。
「……すまない」
それは何に対してだったのだろう。
彼の気配は部屋から消えた。