鈴姫伝説
「実は……ミューマは、この世に存在している者ではない」
は……?
「どういうこと!?」
「その通り、そのままの意味だ」
ミューマは生きてないってこと?
ゆ、幽霊……とか……?
「あの身体は、人工的に造られたものなんです」
アンゼリカは持っていた革の本を机の上で開いた。
う……わ……。
なんて書いてあるの?
ぜんぜんわかんない。
もちろん、日本語じゃないし、あたしはバカだけど、これは英語でもないことが分かる。
カレンデュラ王国の言葉かな……。
「私達から直接説明するのは、難しくて……この本がお話しますわ」
本が話す!?
「では……」
ポウッ……とアンゼリカの両手が光り、それは本を包んだ。
「えっ……」
すると、本に記されていた字が、フワリと浮いて、宙を舞った。
「失礼しますわ」
「え、ちょ……」
彼女が指を鳴らすと、文字が頭の中に流れ込んできた。
ひどい頭痛がして、目の前が真っ暗になった。
『そのまま、力を抜いててください。
大丈夫ですから』
何もない空間にアンゼリカの優しい声が響く。
彼女の言う通り、ただ、力を抜いていた。
文字が言葉を語り出す。