鈴姫伝説






「あ……」




思い出した。



あの子は、近くに住む、割りとあたしと身分の近い姫君で。



食いしん坊で。



甘えん坊で。



でも、明るくて。



人懐っこくて。




いつも、元気で、あたしを笑わせてくれた。



そんなんでも、芯は強かった……。






「艶……!」




ここにいたなんて。



あなただったのね。




ミューマ……。




艶の魂がたぶん、“ミューマ”として、人格はそのままに、記憶を消されて、あのウサギの身体に入っているんだ。




けど……そんな悪質なこと、誰が……?



なんのために……?




もし、何かあるのなら、絶対あたしが突き止めてみせる。



親友だった、艶のためにも。




「お姉ちゃん……?」



ゆきなが不安げな表情をみせる。




「つや、って、誰……?」




あ、そっか。



分からないよね。




あたしは、皆に過去の親友、艶について話した。



鈴姫だったころ、艶という姫君の友達がいたこと。



あくる日、突然いなくなってしまったこと。




そして、ミューマの魂の持ち主が、艶であること……。




あの性格とかからしたら、絶対二人は同一人物だよ。



そして、あたしはもうひとつ、あることに気づいてしまった。





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