鈴姫伝説





「どうした、何があった」




ロイルはあたしに寄ってきて、優しく、うっとりとするような声であたしに話しかけてきた。





「……お母様について、思いだそうとしただけだよ……。





何があったのか、あたしにも、よく分からないけど……」





なんか、考えただけで意識なかったんだもん。





「お母様?



前世のってこと?」




もう立ち直ったらしいゆきなの質問に、あたしは頷いた。




「あたし、顔とか、名前とか、ぜんぜん覚えてないなぁーとか考えてたんだけど、思い出した」




そう。




押し寄せてくる波のように、記憶があたしの頭を襲った。




痛くなって、意識を失うほどに強くて濃い記憶。





思い出したんだよ。





「お母様の名前は……鶴姫。




とても、とても、優しくて、温かくて強い人だった……」






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