鈴姫伝説






昔、お母様は少し身体が弱くて外にも出られないくらいだった。




だから大きなお屋敷のどこかの部屋にいて、娘であるあたしでさえ、なかなか会えなかった。




それでも、時折お母様の体調がいいときには、会いに来てくれたんだ。





『お母様!!』




『あら、鈴』





遊んでいると、お母様が来てくれた。




久しぶりに会ったから、あたしは嬉しくなって、お母様に飛び付いた。




彼女はあたしを受け止め、少しよろめいた。




『大丈夫なんですか?



お体のほうは』




『……えぇ、今日は気分がよくて……』




にっこりと微笑んだお母様を見ると、あたしはお母様のお腹の辺りに頬擦りをした。



優しい日だまりのような香り。



心地よい温かさ。




この温もりが大好きだった。



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