鈴姫伝説
―パチン。
渇いた音がしたかと思うと、景色が変わっていた。
全員が無事、影の世界についたみたい。
静かに立っているナディに、話しかける。
「魔物の気配、する?」
「……もう少し、待ってくれ」
アンゼリカとロイルも、何かを探しているかのように、辺りを注意深く見渡す。
「……分からない」
「森の中に行ってみましょう、姫様。
もしかしたら、隠れているかもしれません」
あぁ、やっぱりすぐには分からないか……。
ミューマがいれば、すぐに分かるのに……。
ミューマ。
その名を想うだけで、グサッとなにかが胸に突き刺さる。
自分で考えていたことなのに。
ムリなことを望んでも、叶わないことは自分が一番よく分かっているはずなのに……。
「魔物がいるかもしれない。
俺が先に行く」
ロイルがスラリと左腰に下げていた剣を抜いた。
彼は剣に霊力を送る。
すると剣は、ブウン……と音を立て、不思議なオーラを噴出させる。
そのオーラは青く光っていて、剣の回りに止(とど)まっていた。