鈴姫伝説

あたしは強くそれを握り締めた。

魔物は喉を鳴らしながら、あたしなんかそっちのけで新たな敵のゆきなを睨む。


チャンス……。


あたしは強く念じた。



(鈴姫の力を解き放て……っ)



身体を黄金の光が包みこむ。

光が弾けて、それはキラキラと粒子となって輝く。

あたしは再び変身することに成功した。



「お姉、ちゃんだよね……?」



ゆきなは信じられないと言いたげにあたしを見つめる。



まぁ、そりゃそうだよ。

目の前で変身したんだし……。

とにかく、あたしは魔物へと視線を移した。


今のあたしのやるべきことはこいつを倒すこと!


「はぁっ!」


唯一自由だった右足で、あたしを掴んでいる手を蹴りあげる。



「グアッ!!」



呻き声をあげて魔物はよろめいた。

そのとき、身体も自由になる。


良かった……。

これで、戦えるっ!


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