鈴姫伝説
「千……」
なんでいるの?
彼はまだ、こちらに気づいていない。
やっぱり、千は女神と繋がっていたんだ!
早く一緒に逃げなきゃ。
そう思うと、身体が勝手に動いた。
「千!」
「っ!?お前は!」
彼は突然現れたあたしに、目を白黒させている。
幸い、そこには千以外誰もいない。
「帰ろう?
あたし、全部わかったの。
女神のやろうとしてることは、たぶん……ううん、とても危険よ!」
あたしは千に詰め寄った。
彼の返事をまった。
早く……。
そのとき、あたしを助けてくれた女性が、声を少し大きくして言った。
「鈴姫様!
早くしないと追っ手が来てしまいます!」
そんなの、わかってる。
でも、あなたの声で聞きたい。
あたしと一緒にここから逃げようって。
一緒に逃げようって。
「…………っ」
わずかに千の顔は歪んだ。