鈴姫伝説






え……。





お母様が……?





しかし、お母様は位のある姫君。





許嫁(いいなずけ)がいたんだ。





それがあたしの昔のお父様……。





お母様は逆らうことも出来ず、お父様と結婚した。





そして、あたしが、生まれた。





泣く泣く、千尋と別れたお母様。





やがて千尋も、家族を作った。







「やっと、やっと、別れたと思ったのに……!」






ギリッ、と女神は歯軋りをした。




その顔は悪魔のようで……。







「もしかして……あなたは……」






「わたくしは、千尋が好きだった……」




もう口調も雰囲気も、変わってしまった女神は目がうつろだ。





「なのに、アイツは他の女と結ばれた!




わたくしのほうがずっとずっと一緒にいたのに……!」








「女神……」






「それからしばらくして、千尋は病(やまい)で死んだ」







突然女神はあたしをにらんだ。






ビクリと身体が揺れてしまう。






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