鈴姫伝説





「いいんです……」





「あ……」





そこには、いつもの黄緑色の鈴はなかった。





黙って出てきてしまったから……。





これじゃ、治療が……。





「いいんです」と、もう一度、艶が言った。





「もう、ダメだって、自分で分かってます……」





「でも……」





反対しようと口を開くと、艶はゆっくり左右に頭を振った。







「あの日、私は、女神様が、鈴姫のお母様……を殺しているところを、偶然…………見てしまった……」







え……。




女神を見ると、彼女の顔は怒りでワナワナと震えている。





「なぜ、記憶を取り戻したんだ……。




術をかけたのに……あの日のことを忘れるように……!」







女神は歯軋りをしながら、あたしたちを睨んでくる。






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