鈴姫伝説




「すずか!



すずか、落ち着け……!」





ロイルが更に腕の力を強める。






「イヤッ! 離して!千!」






いくら暴れても、男の人の力に抗えるワケなくて……。






あたしはしぶしぶ、大人しくなった。







「千はここにはいない」






「え?」






ウソでしょ?





頭が真っ白になった。






「俺たちがすずかがいないことに気づいて、とりあえず全員がカレンデュラに集まったんだ。





そのとき、千が気を失ったすずかを抱えてきたんだ」







ここへ、千が連れてきたの?





「そして、すずかを俺たちに託すとアイツは



『まだやり残してきたことがある。





このままここにいても、終わらないんだ』







と、あっという間に行ってしまった」








なんで…………?




カクッと力が抜けた。





あのとき、あなたは身を呈してあたしを助けてくれたのに。






裏切ってまで、守ってくれたのに。






一緒に帰ろうと言ってくれたのに。





たしかにあのとき、心が通じ合えたと思ったのに……。





なのに、なんで?






疑問が脳裏に浮かんでは、消えていく。





< 423 / 511 >

この作品をシェア

pagetop