鈴姫伝説
「すずか!
すずか、落ち着け……!」
ロイルが更に腕の力を強める。
「イヤッ! 離して!千!」
いくら暴れても、男の人の力に抗えるワケなくて……。
あたしはしぶしぶ、大人しくなった。
「千はここにはいない」
「え?」
ウソでしょ?
頭が真っ白になった。
「俺たちがすずかがいないことに気づいて、とりあえず全員がカレンデュラに集まったんだ。
そのとき、千が気を失ったすずかを抱えてきたんだ」
ここへ、千が連れてきたの?
「そして、すずかを俺たちに託すとアイツは
『まだやり残してきたことがある。
このままここにいても、終わらないんだ』
と、あっという間に行ってしまった」
なんで…………?
カクッと力が抜けた。
あのとき、あなたは身を呈してあたしを助けてくれたのに。
裏切ってまで、守ってくれたのに。
一緒に帰ろうと言ってくれたのに。
たしかにあのとき、心が通じ合えたと思ったのに……。
なのに、なんで?
疑問が脳裏に浮かんでは、消えていく。