鈴姫伝説
グッタリとした千が宙に浮いていた。
身体中ケガをしているらしく、黒いコートの中の白のシャツは赤黒く、染まっている。
女神の術か何かで、千は宙で身動きができないみたい。
「女神……千に何をした!!」
千の真下におる女神を、あたしは金切り声で呼ぶと睨んだ。
「あら、戻ってきたのね……鈴姫」
こちらを振り向いている女神はにんまりと微笑んだ。
そう言っているのに、本当はあたしが戻ってくるのをわかっていた、とでも言いたげな顔をしている。
「何をしたって言っても……見ての通り、気を失わせているだけよ」
「……気を失わせて……?
何でよ」
さも、当然のように言う彼女はおかしいと思った。