鈴姫伝説
すると女神はその黒い手で伝説の鈴を高く掲げた。
鈴は豪華なシャンデリアの光を受けて、キラキラと小さな太陽のように輝いている。
女神の喉がゴクリと唾を呑み込み、音を立てた。
「ずっと、ずっとこのときを待っていたのだ……」
濃いピンク色のその瞳はもう伝説の鈴と、新たな世界しか見据えていなくて……。
「う……、がはっ……!」
千の呻き声が聞こえた。
また、彼は大きく血を吐く。
ぜんぜんキズが塞がってない。
このままじゃ、千が……!!
千はさっきの反動で石でできた壁際まで押し退けられている。
その周りを霊力を宿した矢を千に向けた天使たちが、ズラリと囲んだ。
千はキズが深すぎるのか、動くことができない。
その前をサッと黒い影が横切った。