鈴姫伝説




会いたいな。



そう言おうとして、止めた。



あたしは、霊力を失った。



ということは、みんながあたしには見えないということで……。




「すずか……」



千があたしを優しく抱き締めた。



彼にもわかったのだろう。



胸が張り裂けそうだ。



もう、みんなと会えない。



触ることも、話し合うことも、笑いあうことも……。




そんなの、ヤダよ……。



でも、あたしが霊力を失ったことで、鈴姫になることはできなくなり、彼らの主もいなくなった。




つまり“あたしと伝説の鈴を守る”という重い任務から解放されたのだ。



あたしが苦しむだけで、すむなら……みんなが幸せに暮らせるなら、それでいい。



もう、危険と隣り合わせ、なんてこともないだろう。



会えないけど、安全に暮らせるなら……。





そう思うと、涙が溢れた。




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