鈴姫伝説

目をつぶって、ただ祈り続ける。



不安で胸が押し潰されそう。

どく、どく、どく、と心臓の音ばかりが聞こえて、余計にあたしを不安にさせた。


大丈夫だよね……。

ゆきな……。


しばらくすると、視界が開けて目の前には洋風の城のような外見の家があった。


お、大きい……!!

お城みたい……。

あたしは見とれて立ち尽くした。

っと、いけない。

ゆきなを探さなくちゃ!!


「ゆきなぁ~」


短めのきちんと芝が刈り取られている庭を進む。

雑草などが生えていないから、手入れが行き届いてあるのが一目で分かった。


「ここ、どこなの?」


あたしは抱えたままのミューマに尋ねる。


ミューマも辺りを警戒しているみたい。


「気を付けるミュ。ここは千の城……」


「千の!?」


思わず大きな声を出してしまった。

ミューマがキッとあたしをしたから睨む。


わあっ!

ごめんって。


「どっかにいるかもしれないってこと!?」


さっきのことを反省し、ミューマに小声で話しかける。

ミューマを見ると、こくりと頷いた。


気を付けなきゃ……。


前に進むと大きな門が現れた。

鉄でできた、重厚感がある。

重そうな外見に、思わず緊張が高まった。

蔦が絡んでいて、とても趣(おもむき)があるそれをそっと押すと、見た目とは違い、すんなりと開いてしまった。




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