鈴姫伝説


「…………」



彼はなにも言わず、真っ直ぐあたしを見つめてくる。



気づくと、肩に鈍い痛みが走った。


「っ、あ……」


あっという間に景色が後ろに飛んでいく。


──ジャリ。


足下で砂利が擦れる音がする。


前を見るとあんなに近くにいたはずの千は遥か遠くにいる。


突き飛ばされたんだ……!


千に押された肩がそう自覚した途端、痛みだす。


“鈴姫”に変身している今は不老不死だから、攻撃だけでそんなに身体が痛くなることはないのに……。

なんて、力……!


「く……!」


何とか地面から重い身体を剥がす。

痛みで歪む視界にこちらに向かってくる千の姿が見えた。

< 73 / 511 >

この作品をシェア

pagetop