鈴姫伝説
「…………」
彼はなにも言わず、真っ直ぐあたしを見つめてくる。
気づくと、肩に鈍い痛みが走った。
「っ、あ……」
あっという間に景色が後ろに飛んでいく。
──ジャリ。
足下で砂利が擦れる音がする。
前を見るとあんなに近くにいたはずの千は遥か遠くにいる。
突き飛ばされたんだ……!
千に押された肩がそう自覚した途端、痛みだす。
“鈴姫”に変身している今は不老不死だから、攻撃だけでそんなに身体が痛くなることはないのに……。
なんて、力……!
「く……!」
何とか地面から重い身体を剥がす。
痛みで歪む視界にこちらに向かってくる千の姿が見えた。