好きより、もっと。



わかったさ。

そんなもん、誰に言われるまでもなく。

わかってるに決まってンだろうが。




「なんで、大崎さんに助け舟なんか出させたんです?」


「大崎さんが出したのは、助け舟じゃねぇよ。」


「え?」


「大崎さんは、アミが此処から逃げ出すように仕向けたんだよ」




本田の顔は驚きを隠せないようだった。

しかし、その言葉を聞いて本田は焦ったように言葉を紡いだ。




「大崎さん、さっき急用がある、って出て行きました。仕事用のPCと書類を抱えてっ!何処に行くかなんて、わかりきってるじゃないですかっ!!!」


「おい・・・、それって・・・」


「弱ったアミさんのところに、自ら行くに決まってるじゃないですか!?ほっといていいんですかっ!?」


「いいわけねぇだろうがっっ!!!!くそっ、ふざけンなよっ!!」




本田の横をすり抜けてドアに手を伸ばした時、本田は俺の手を掴んだ。

一刻も早くここを飛び出したい俺は、それを煩わしく思った。

振り払おうとすると必死になって本田が俺の腕を掴むので、無意識に舌打ちをしてしまった。




「聞いてください、カズさん」


「早くしろよ。アミんとこに行きてぇんだ」




不機嫌な様子も慌てる様子も隠すことなく、俺は本田を見下ろすように目線だけ向けた。

そこには、縋る訳でも、媚びる訳でもない本田がいた。



現場に出ている時みたいな、真剣な顔をされたら。

俺は大人しくお前の話を聞くしかねぇじゃねぇか。




クソッ!!!!!


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