好きより、もっと。
優しさ
カズからの電話が途切れた。
もう呆れられたんだろうか。
けれど『迷惑がかかる仕事』をした私が、カズの優しさに甘えるわけにはいかない。
カズは、きっと心底甘やかしてくれるから。
私の失敗を何もなかったように、全てカバーしようとしてくれるから。
そんな仕事の仕方がしたいわけじゃない。
一緒に肩を並べて、信頼して欲しいだけなのに。
やっと認めてもらえて、カズと肩を並べられるようになったのに。
なんてザマだろう。
大崎さんが怒るのはもっともだった。
自分で持って帰ってきた資料は、必要な資料と不必要な資料が一緒に入っていて。
こんな状態で打ち合わせをしようとした自分に、只々呆れるばかりだった。
「何、やってんだろ・・・」
何度目かわからない呟きを吐き出すと、止まったはずの涙も一緒に零れ落ちた。
零れる度に自分の駄目な部分が明確になっていくようで苦しい。
溢れ出る涙と一緒に、私の情けない部分も流していってくれればいいのに。
流れ出た水分の分だけ心の奥に残った塊は重さを増していった。
自分では溶かすことも無くすことも出来ないその塊は。
いつになれば軽くなり溶けだそうとしてくれるのだろう、と。
そんなことばかりを考えて、流れる涙を拭っていた。
そして、また携帯が着信を告げた。