好きより、もっと。
やっぱり大崎さんは厳しい人で。
けれど、とても優しい人だと想った。
原因が自分だと認めるために電話をくれて、それでも仕事はしっかりしろ、と。
叱咤してくれる上司は、そういないと想った。
『高田、今から出られるか?』
「・・・はい?」
『打ち合わせだ。お前がいないと、明日のイベントなんか回るわけないだろう』
「えっと・・・、あの」
『十五分後、家の前に車を付ける。準備して降りて来い』
「あ、あのっ!」
『資料、持って帰ってきてるだろ?差し替えもあるから、そのまま持ってこい』
「大崎さんっ!!!」
『なんだよ。俺、すぐにお前ン家に着くぞ?早く準備しろ』
ぶっきらぼうに言葉を零すのに声色がとても優しく感じるなんて、この人はどんな技を持っているのだろう。
私が声を発するのを、じっと待ってくれるこの人は。
なんて大人なんだろう。
「・・・私、イベントに参加してもいいんですか?」
私の言葉に小さく溜息吐く、大崎さん。
その些細な音に反応するくらい、今の私は怯えているのだ、と気付く。
大崎さんの言葉をもらわないと、私は絶対に動けないと自分でわかっていた。
『さっきも言ったはずだ。『お前がいないと、明日のイベントなんか回るわけないだろう』って。お前が必要なんだよ、高田』
あぁ。
もう、いっぱい謝ろう。
そして、いっぱい頑張ろう。
みんなが呆れた分を、必死になって取り返してやろう、と想えた。
大崎さんはとても優しい声で、『早くしろ』と促して電話を切った。