好きより、もっと。
理想と現実と誘惑
会社に着くと、すぐに打ち合わせを始めた。
必要な資料を自分のPCから出力し、大崎課長の分も用意する。
カズが用意してくれたであろう差し替え資料は、課長から私に手渡された。
進行表の訂正事項と明日の流れ、クライアントの対応など。
私が任される部分と、チーフとしてカズと分担する部分の確認を行った。
「とまぁ、こんな感じだ。何か質問は?」
「はい、では一点だけ。配置時間はどうするんですか?全員一緒だと、私とカズで捌けないと思いますが?」
「あぁ、その部分は俺も担当する」
「でも、それだとクライアントの対応とバッティングしますけど?」
「あれ・・・?昼にカズと打ち合わせした時に見逃したか?」
「それじゃあ、桂木君の時間を調整しますか。今回はキヨちゃんとコンビですけど、彼女の独り立ち練習も兼ねて」
「あぁ。じゃあ、その指示は頼む」
「わかりました。気になったのは以上です」
そう伝えると、フッと柔らかい笑顔で大崎さんが笑った。
それを見て、私は少しだけ首を傾げていた。
「どうしたんですか?そんなニヤけた顔をして?」
「ニヤけてる、はないだろう」
「いえ。ニヤけてる、という表現が適切ですってば」
クスクスと笑いながらそう言えば、大崎さんも少し困ったようにクスリと笑った。
何も言わないその人を尻目に手早く資料を片づけると、大崎さんは立ち上がることなく私を見ていた。