好きより、もっと。
「アミさん。多分、カズさん・・・怒りますよ」
「わかってる。覚悟の上だから」
「・・・」
何か言いたそうだったけれど、桂木君はそのまま口を閉じた。
言いたいことが分かっているだけに少し気まずい空気になりそうだったので、柔く笑いかける。
それだけで、桂木君が納得してくれることを知っていた。
MC原稿に目を通していると、会社ケータイが鳴り出した。
その電話は私が仲良くしているスタッフの菊池ちゃんのお母さんからで。
娘が交通事故に遭いました、との衝撃の電話だった。
幸い命に別状はなく、意識もハッキリしているとのこと。
ただ、左足の複雑骨折と右手骨折で全治三ヶ月だと教えてくれた。
目が覚めた本人は、開口一番『高田さんに連絡して!』と言ったらしく、それを聞いて嬉しいやら驚きやら心配やら、何とも言えない気持ちになった。
お大事に、と彼女の母親に伝えると、『いつも、高田さんの話を聞いているんですよ』と優しい声をかけられた。
電話を切った後、桂木君に病院に行ってもらうようお願いをした。
快く引き受けてくれた桂木君も、嬉しそうだけど心配そうな、何とも言えない表情だった。
心配ではあるけれど、私のことをちゃんと考えてくれていた菊池ちゃんのことを想いながら、到着した現場でカズの元を目指した。