好きより、もっと。
逢いたい気持ち
「では、そのように進めて参ります。セレモニーの手順ですが―――――」
目の前には打ち合わせをしているカズと、クライアント尾上さんがいる。
話の内容が少し聞こえてきたが、カズはこの現場のことをしっかり理解しているようだった。
最初からこのイベントに携わっていたわけではないのに、どうしてそんなに簡単に理解できるのだろう。
現場慣れしているカズには、簡単なことなのかもしれないけれど。
それでも、やっぱり羨ましい。
そんな二人に向かって足を進める。
まず最初に、しなくてはいけないことがある。
私が近づいた気配を感じて、二人は顔をこちらに向ける。
案の定、カズは般若のような顔で私を睨みつけてきて。
カズの顔は恐ろしいくらい綺麗な顔なので、怒った顔さえも作り物のようだった。
この顔を見慣れていないと、あまりに怖くて逃げだしてしまう女の子もいるだろうな、と苦笑いを零した。
「尾上さん、大変申し訳ありませんでした」
「高田さん、お疲れ様。で、何があったの?」
問いかけられる、その柔らかな口調には。
問い詰めようとする意志などない、という響きを含んでいた。
「いえ、こちらの不手際です。大変申し訳ありません」
「高田さん」
「はい」
目線を上げて尾上さんを見つめると、困ったように笑うその人がいた。
相変わらず優しそうな、それでいて心配性を絵に描いたような顔をしているな、と思った。