好きより、もっと。
「何で現場に来た?」
「だって、今日女性MC必須だし」
「そんなの俺が何とかして捕まえてやるよ」
「アテはあったの?」
「・・・ねぇよ。悪いかよ」
「今日は、女性MC捕まえるの厳しいと思ったの。それに、自分の現場のことだしなんとかしなきゃって、身体が先に動いちゃって」
「実際、助かったんだよ。お前いないと、多分現場は回んねぇだろうから」
「それなら―――――」
「でも、今日は特別だ」
私の言葉を遮って、カズは私を抱き締める力を強くする。
その力に合わせて、胸の奥が苦しくなるのを感じた。
息の止まる、そんな苦しさを。
「お前、ここ二週間おかしいよ」
「なにそれ?ヒドイよ」
「本当のことだろ?タクがいなくて、そんなに淋しいかよ?」
「・・・」
「それを何とかするために、大崎さんだって休みくれたんだぞ?そのまんまじゃ、仕事になんねぇからだ」
「でも・・・」
「会いに行ってやってくれよ。アイツも、絶対それを望んでる。俺や未央じゃなくて、亜未に逢いたいと想ってるんだよ」
カズの言葉は、私が今とても欲しかった言葉だった。
それと同時に、仕事を出来なくさせる言葉だった。
「カズ・・・」
「なんだよ」
ぶっきらぼうな言葉は、心配している証拠だって、知ってる。
強い力は、優しさの証拠だって、知ってる。
だから余計に苦しいよ、カズ。
苦しくて、寂しいよ。