好きより、もっと。



「――――――タクに、会いたい」


「早く言え、バカ」




口に出してしまうと、あっけないもので。

我慢していた気持ちは、あっという間に決壊してしまった。



泣いてメイクがボロボロになってしまえば、現場になんて立てない。

我慢していたのに、それすら無駄だ、と。

カズはその腕の強さで教えてくれた。



私を抱き締めて頭を撫でてくれるカズの手は、まるで恋人をあやすようで。

私は、その手にとても安心してしまっていた。




「ただ・・・」




そんな空気を破ったのは、カズだった。




「この後のことは俺が何とかする。でも、お前を送ってやれねぇんだよ」


「そんなのっ!!ここまでしてもらったんだよ・・・?これ以上なんて、バチ当たっちゃうよ・・・」


「こんな状態のお前、一人で行かせられねぇよ」




カズの腕の中は、力強くて苦しい。

けれど、その力強さが『優しさ』なのだと気付くのは容易い。


だってこの腕の中では、どんなに暴れても無駄だと、思い知らされるから。

それは同時に。

カズが全てを受け止めて、守ってくれるということだから。




「カズ・・・、そろそろ打ち合わせ―――――」
「いいよ。呼ばれるまで、こうしててやるから。此処にいろ」





甘えてはいけない腕だ、と。

理解はしているのに、もう縋ることしか出来なくなってしまった。



タクとは違う、カズの腕。

カズの腕は、『タクの大切なモノを守る』腕なのだ。




その力強さに。

心の底から『ありがとう』と想った。


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