好きより、もっと。
尾上さんの現場は、私が初めてチーフとして仕事の全権を任せてもらった仕事だ。
他の部署のアシスタントとして仕事をこなすのではなく。
自分がマネジメントして現場を仕切る仕事をした現場だった。
尾上さんは効率の良い方法、手法として使えるもの、スタッフの対応からクライアント対応まで。
私の至らない部分を厳しく指導してくれた人だ。
厳しかった分、学ぶこともとても多く、尾上さんの現場担当に指名された時には跳ね上がる程嬉しかったのを憶えている。
「試された、ということは、結果がありますよね・・・。それって・・・」
「私が此処にいることが、高田さんへの評価よ。尾上さんは、高田さんのために自社のスタッフを動かすほどお気に入りってことよ」
「ありがとうございます、そこまでうちの会社にお気遣いいただいて。よかったな、高田」
「とんでもありません。急な登板なので、早急に打ち合わせをしましょう。望、もうすぐパパが迎えに来るから少し待っててね」
「では時雨さん、打ち合わせを――――」
ぽかんとしている私をよそに、二人は打ち合わせを初めてしまった。
そこにただ立っているだけの私の服をくいくいと引っ張る感覚。
私の横には、小さな男の子が立っていた。
「おねえちゃんは、おしごとないの?」
「え、あ・・・うん。ないの、かな?」
「じゃあ、パパがくるまでいっしょにいてくれる?」