好きより、もっと。
小悪魔二人
事務所に戻ると、席にはみんながいた。
制服を用意しているあかねとキヨちゃん。
図面と睨めっこしている国井くん。
桂木くんは、相変わらずクールにパソコンに向かっている。
もう少し、ニコリと笑ってくれたら。
他の部署のみんなもとっつきやすいのになぁ、と思う。
「あっ、おはよーございまぁす」
「おはよ、キヨちゃん」
「高田さん、制服用意できましたぁ」
「ありがと。じゃあ、後であかねと一緒に試着しようね」
「はぁい」
キヨちゃん独特の甘ったるい喋り方は、普通ならイラッとするだろうけれど、この子が話すと平気なのが不思議。
やっぱり、どこかしら毒素を持っているのがいいのかも、と勝手に思ったりしている。
「アミさん、おはようございます」
「あぁ、あかね。おはよう。早速だけど試着の準備しようか?」
「部屋は手配してあるので、後は運ぶだけです」
「ありがと。いつも仕事早くて助かるわ~」
「カズさんにシバかれるのは、勘弁なんで。言われなくてもわかってるからっ!って気分になるの、最低ですからね」
――――――――――辛い。
相変わらず辛口の毒舌。
でも、あかねらしくて安心するのもこの瞬間だ。
カズはとっくに男三人で打ち合わせを始めてるし、大崎さんは仕事モードの顔になって電話をしてる。
キヨちゃんとあかねが制服を持って立ち上がったので、私は二人に目配せをして先に行かせた。
カズにいつもの水色の付箋を渡して、そこに小さく『試着』と書いて私も席を立った。